所有権登記名義人表示変更(名変)

不動産登記

不動産の売買代金の決済において、登記簿上の住所から今現在の住民票登録上の住所に変更がある場合や戸籍上の氏名の変更がある場合、原則として、所有権登記名義人表示変更(いわゆる名変)の登記が必要になります。

この費用は売主が負担することが実務上一般的ですが、この登記はそもそも必要なのか?といったご質問も時々頂きます。

専門的な話です。

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名変登記とは?

登記されている権利に関する現在の登記名義人につき、その氏名・住所が登記記録上(登記簿上)と一致しない場合に、一致させるためになされる登記です。

何故名変登記が必要か

不動産登記法には、登記の連続性の原則という、現に登記記録上に表示されている者を起点として連続して新たな登記がなされることを要するという原則があります。

不動産登記法

(申請の却下)

第25条
登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。
  1. 申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき。
  2. 申請が登記事項(他の法令の規定により登記記録として登記すべき事項を含む。)以外の事項の登記を目的とするとき。
  3. 申請に係る登記が既に登記されているとき。
  4. 申請の権限を有しない者の申請によるとき。
  5. 申請情報又はその提供の方法がこの法律に基づく命令又はその他の法令の規定により定められた方式に適合しないとき。
  6. 申請情報の内容である不動産又は登記の目的である権利が登記記録と合致しないとき。
  7. 申請情報の内容である登記義務者(第65条第77条第89条第1項(同条第2項(第95条第2項において準用する場合を含む。)及び第95条第2項において準用する場合を含む。)、第93条(第95条第2項において準用する場合を含む。)又は第110条前段の場合にあっては、登記名義人)の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。
  8. 申請情報の内容が第61条に規定する登記原因を証する情報の内容と合致しないとき。
  9. 第22条本文若しくは第61条の規定又はこの法律に基づく命令若しくはその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならないものとされている情報が提供されないとき。
  10. 第23条第1項に規定する期間内に同項の申出がないとき。
  11. 表示に関する登記の申請に係る不動産の表示が第29条の規定による登記官の調査の結果と合致しないとき。
  12. 登録免許税を納付しないとき。
  13. 前各号に掲げる場合のほか、登記すべきものでないときとして政令で定めるとき。

法25条7号により、登記義務者(売買代金の決済でいうと売主)の氏名、名称、住所が登記記録(登記簿)と合致しないときには申請を却下しますという恐ろしいことが記載されています。

司法書士はこの前提となる名変登記をしないで他の登記を申請した場合、登記申請が却下されるため、決済場所においてこの名変登記の要否にかなり神経を使います。(もっとも事前に書類を頂いていたりと準備をしているので、そのようなトラブルはほとんどありませんが)

つまり、原則としては登記簿に記載されている住所や氏名と、印鑑証明書上の住所や氏名に相違がある場合は、登記官は登記簿上の人と印鑑証明書上の人を同一人物だとみなしてくれないため、その相違を同一にするための登記というわけです。

例外的に前提としての名変登記が不要なケース

所有権以外の権利の抹消登記

所有権以外の権利の抹消登記を申請する場合は、登記名義人の表示に不一致が生じていても、その変更を証する情報を提供すれば、名変登記を省略して直ちに抹消登記を申請することが出来ます。

ここでいう変更を証する情報とは、例えば抵当権の抹消登記の場合の抵当権者(銀行等)の登記簿上の商号が、従前の商号である場合に、登記事項証明書から変更の経緯がわかる場合の登記事項証明書のこと(())です。

1)抵当権者の会社法人等番号を提供した場合であって、抵当権者の従前の会社法人等番号と現在の会社法人等番号が同一である場合は登記事項証明書の提供に代えることが可能です。

所有権に関する仮登記の抹消

仮登記とは順位保全効のある登記です。詳細は割愛しますが、この仮登記は本登記をなすまでの暫定的な登記ですので、その暫定的な登記を抹消する際は、所有権以外の権利の抹消登記と同様の趣旨で、同様の取扱いをすることが認められています(昭32.6.28民甲1249号)

勿論、所有権以外の権利に関する仮登記の抹消も、前提としての名変登記を省略することが可能です。

 

相続による権利の移転登記

相続についてはこちら⇒「相続と遺言」

登記簿上の所有者が亡くなった場合において、登記簿上の被相続人(亡くなった人)の住所や氏名と、亡くなった当時の住所や氏名に変更があった場合でも、前提としての所有権登記名義人住所変更や所有権登記名義人氏名変更の登記は不要です。

この場合、同一性を証する情報を提供します。

この同一性を証する情報ですが、つい最近新しい通達が通知されました。

「被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について(通知)」〔平成29年3月23日付法務省民二第175号〕

「相続による所有権の移転の登記の申請において,所有権の登記名義人である被相続人の登記記録上の住所が戸籍の謄本に記載された本籍と異なる場合には,相続を証する市区町村長が職務上作成した情報の一部として,被相続人の同一性を証する情報の提出が必要であるところ,当該情報として,住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。),戸籍の附票の写し(登記記録上の住所が記載されているものに限る。)又は所有権に関する被相続人名義の登記済証の提供があれば,不在籍証明書及び不在住証明書など他の添付情報の提供を求めることなく被相続人の同一性を確認することができ,当該申請に係る登記をすることができる」

要約すると

被相続人の登記簿上の住所と、被相続人の(除)戸籍謄本上の本籍地が一緒⇒同一性を証する情報の提供は不要

 

被相続人の登記簿上の住所と、被相続人の(除)戸籍謄本上の本籍地が違う⇒同一性を証する情報必要

⇓ 必要なものとして

・住民票の写し(本籍地及び登記記録上の住所記載入りのもの)or戸籍の附票の写し(登記記録上の住所記載入りのもの)

又は

・その所有権に関する被相続人名義の登記済証(登記識別情報ではNG

を提供する。

上記の書類が取得できない場合には、さらに下記の書類が必要になります。

ただし、法務局によって対応が違うため、事前に要相談してください。

 

・相続人全員の「登記簿上の所有権登記名義人と戸籍に記載された被相続人が同一である」旨の上申書(相続人全員の印鑑証明書付)

・不在籍証明書、不在住証明書(登記記録上の住所地に被相続人の本籍と住所がない旨の証明書)

が必要になります。

費用負担

所有権登記名義人の住所や氏名変更の登記費用や担保権の抹消の費用は、売買契約書に売主が負担すると記載されていることが一般的です。

そのため、司法書士は、売主様にもお見積りを出して決済時に実費と共にお預かりします。

登録免許税

不動産1個につき、金1,000円です。

ここで注意が必要なのが、敷地権付き区分建物の場合です。

敷地権付き区分建物については土地の利用権が建物と一体となって公示されておりますので、独立した一つの登記簿ですが、不動産1個につき1,000円ですので、敷地権の目的である土地も含めて登録免許税も計算します。

まとめ

名変登記は実はとても奥の深い論点がいろいろとあります。売主様が内緒で勝手に本人申請して、補正になったり登記が完了しなかったりといったケースで、決済日が延期になるケースというのも経験しております。