地面師(詐欺師)の手口

不動産売買

不動産残代金決済の立ち合い時に、もし目の前の人物が偽物(詐欺師)であることを見抜けずに売買代金の支払いを促し、買主が損害を被った場合には、司法書士や仲介業者が損害賠償責任を負う場合もあるでしょう。

地面師の手口はシンプルなものから近年どんどん巧妙になってきており、より一層注意をする必要があります。

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地面師とは?

地面師とは、不動産の真の所有者になりすまし、不動産の売却を装い、買主から売買代金を支払わせる詐欺師の総称です。

地面師と呼ばれる所以は、高額な建物の建っていない土地(更地)が狙われることが多いため、そのように呼ばれます。

地面師に狙われやすい不動産

地面師も出来るだけ成功しやすく高い金額を得れるような不動産を狙うでしょう。

注意喚起及び自分への心構えも踏まえ列挙します。

売買の実勢価格が高い

不動産の価格が高くても安くても地面師の労力は変わらないので、同様の労力であればより高額な不動産を狙うのではないでしょうか。

建物の建っていない更地(土地)

建物が建っている場合には、買主が内覧を希望するケースがあるでしょうから、内覧を希望された場合偽物の所有者は対応できない可能性が極めて高いでしょう。

また、売買代金の決済後に引き渡す鍵や建物の書類(確認済証、検査済証)等の問題も出てくるかと思いますし、購入前のレントロール、賃貸借契約書等、更地の売買に比べ用意する書類がかなり多くなり成功確率も下がるからかと思います。

担保物権(抵当権、根抵当権等)が付いていない

抵当権等の担保物権が設定されている場合には、実務上買主から売主に売買代金が支払われた後に、売主の借入先に抵当権等を抹消するため売買代金の中から残債(借金)を全額支払います。(そうしないと買主は担保に供されている不動産を取得することになり、きれいな所有権を取得することが出来ません。)

そのため、地面師の手残りは売買代金から残債を控除した金額となってしまうため、担保の設定されていない不動産を狙うのでしょう。

また、担保物権が設定されているケースでは、繰り上げ返済の段階で借入先での本人確認等の問題もあるため、担保が付いている不動産はまず狙われないでしょう。

偽造する書類

地面師の手口は、司法書士が買主に売買代金の支払いを促す際に確認する書類を基本的に全て偽造して偽の所有者になりすまし、不動産取引に関与する買主や司法書士を欺きます。

以下偽造する書類です。

権利証

平成17年の不動産登記法改正前は、不動産取得時に現在の登記識別情報通知ではなく、登記済権利証という法務局の受付印が押印された冊子が不動産所有者に対して発行されておりました。

登記済権利証は現在の制度である登記識別情報通知のように外観が画一的な書類ではなく、権利証によって手書きであったり字のフォントや大きさ、サイズ等もまちまちです。

平成21年までに全ての管轄で登記済権利証から登記識別情報通知に移行されたため、権利証の現物というのは少なくとも今から10年以上経過している書類となります。
なかには発行されてから50年以上前の権利証もあり、地面師は経年劣化した古紙の質感等も偽造してくるようです。

過去の地面師の手口は基本的に登記識別情報ではなく権利証を精巧に偽造し、関係者を欺くやり方が多いようです。

不動産登記に精通している司法書士はしょっちゅう色んな年代の権利証を触っているので、過去見破れなかった事件は司法書士も騙されるほどの本物そっくりの権利証を持参してくるのでしょう。

今後は登記識別情報通知を偽造するケースも出てくるかと思いますので登記識別情報の場合でも注意が必要です。

印鑑証明書及び実印

不動産を売却するには登記に関する委任状に実印の押印及び発行後(登記申請日から)3か月以内の印鑑証明書が必要となります。

印鑑証明書も精巧に偽造してくるようです。偽造された印鑑証明書の印影の印鑑を用意してくるようですので、印鑑ではなく印鑑証明書の偽造を見抜く必要があります。

運転免許証若しくはパスポート等の本人確認書類

司法書士には意思確認、本人確認義務があり、犯罪収益移転防止法(マネーロンダリング法)によっても所定の本人確認義務があります。

本人確認資料は種々ありますが、一点だけで問題ない本人確認資料として一般的なのが運転免許証やパスポートです。

最近では個人番号カード(マイナンバーカード)も一点の本人確認資料として何ら問題ありませんので注意が必要です。

近年の手口

近年起きた既遂事件の手口です。

実在する弁護士の立ち合い

近年発生した事件では、地面師グループと実在する本物の弁護士がグルになって詐欺取引に関与しております。本物の弁護士が取引に関与することにより、不動産取引の信用性を高めて関係者を欺きます。

この弁護士というのは、何度も懲戒歴があり、悪い噂が絶えない弁護士のようです。

入念な打ち合わせ

今までの事件では地面師グループは複数人いるケースが多いようです。

不動産所有者になりすます役やブローカー役等、きっちり役割分担しているようです。

決済日を急かす

地面師としては関係者に疑念を持たれぬ時間を極力少なくするため、依頼日から決済日まで日数がほとんどないことが多々あるようです。

また売買対象不動産に担保が設定されていない場合には、決済日までの期間を短くも出来るため、やはり担保が設定されていない不動産が狙われるかと思います。

売買代金を支払った買主はどうなる?

実体法上の所有権を取得することも勿論出来ませんし、登記申請をしても法務局の方で偽造書類を見抜けない場合を除き、登記名義も取得することも出来ません。(仮に法務局が偽造書類を見抜けずに登記が完了し、登記名義を取得したとしても無権利者との無効な売買でありますから、登記名義も不実の登記となり無効となります。)

この場合偽者所有者に対し支払った売買代金は無効な取引ですから、地面師の受け取った売買代金というのは不当利得であり、理屈としては買主は偽者の所有者に対し、不当利得に基づく利得金返還請求訴訟等を提起することになります。

もっとも偽物の所有者達(地面師グループ)は決済後に逃亡しているでしょうから、取引に関与した宅建業者や司法書士に過失があれば損害賠償請求することも考えられます。

ただし現実的には地面師グループが逮捕されかつ支払い能力がある場合でない限り、買主は泣き寝入りになってしまうかと思います。

では騙されるか?

結論から申し上げますと騙されることはないでしょう。

依頼者、不動産仲介業者の有無、依頼者や不動産仲介業者、ブローカーとの面識や経歴、担保権の有無、不動産の価格、決済日までの時間等総合的な事情を考慮して、もしそういう取引に立ち会った場合は決済日までに相当怪しい取引だとして臨むでしょう。

事前に登記に必要な書類(権利証や印鑑証明書)もFAX等でお送りしてもらうかと思いますし、仮に拒んだら当日の警戒心は最高潮になるかと思います。

当日の関係者の様子等少しでも怪しいところがあれば売買代金の支払いを促すところまで至らないでしょう。

既存の全ての書類を偽造する手口であれば不動産決済に精通している事務所であれば、騙されることはまずないかと思います。

【例外】この手口をされたら間違いなく騙されてしまう

最近権利証を紛失した際の本人確認情報作成における本人確認の面談をしている際にふと思ったことを考えていたら、このやり方をされたら高確率で見抜けないと思いました。

そのため過去の事件を徹底的に調べましたが、私が考えうる手口はまだ地面師によってなされていませんでした。(事件として表に出ていないだけかもしれませんが)

不特定多数が見るブログという場所では詳しい手口は書きませんが、一つだけ言えることは地面師グループは権利証を所有しておらず、司法書士による本人確認情報での代替を希望してくる場合です。

またこの手口の場合は対象となる不動産が必ずしも高額ではない可能性があります。

物件の売却依頼をされた仲介業者においてもこの方法をとられると登記名義人でないということはほぼほぼ見抜くことは出来ないでしょう。

まとめ

幸いにも私はまだ不動産取引において、そういう取引に立ち会ったことはありませんが、被害者となるのは基本的に買主です。

そのため少しでも怪しい取引の場合には、売買代金の支払いを促す司法書士は面識があり不動産売買に精通した信頼のおける司法書士に依頼した方がよいかと思います。